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 2.ノイマルクト(ピヒルシュロス、グレベンツェン自然公園)
     (2007.8.12〜18)

     
  
雨戸のバツ印が中世らしくて愛らしい   寝椅子が並ぶ空気療法小屋

グラーツ駅まで見送りに来てくれた友人夫妻に手を振ってお別れをし、午後2時にウンツマルクト駅に着くと、ホテルから約束どおりマイクロバスが迎えに来てくれていたので、もう二人のお客さんと一緒に乗り込みました。30分ほど走って、ホテル「ピヒルシュロス」に到着。ノイマルクトという小さな町から、5分くらい山道を登った中腹、海抜876mに立つ、中世のお城を改造したホテルです。女主人がにこやかに迎えてくれました。まあ、眺めのいいこと! それに空気のおいしいこと!


    

  私の部屋は三階の角部屋。シンプルだけれど壁の色合い、家具、カーテンの柄など、エレガントな雰囲気。右側の窓は、ホテルの入り口の門に向いています。左側の窓は山を背にしていて、左上方に空気療法小屋も見えます。窓から見える木の下枝が揺れたので、あ、小鳥かしら?と思ったら、しばらくして走り出てきたのは濃い茶色の毛をしたリスでした。夕食まで荷物をほどき、少し休み、ホテルの中を探検しました。階段や廊下の隅に、エレガントな椅子や小テーブル、花瓶などが置かれ、なかなかいい感じ。ベランダは花でいっぱい。部屋に緊急修理用の針と糸が備えてあるのも、気の利いた心遣いだと思いました。

呼吸療法の参加者は10人ほど。申込者が多かったので、私たちは先週に引き続き、二度目のコース参加者です。参加者はみな同じテーブルで食事をするので、お互いを紹介し合い、食後の8時から1時間ほど、呼吸療法の説明と導入がありました。終わりには、もう足の裏が暖かくなったのを感じました。

 
 呼吸療法コースが行われた「緑のサロン」。この窓の反対側の壁には1.5x2mくらいの大きな絵がかかっていて、美しい令嬢の立ち姿が描かれていました。ああ、この写真も撮っておくんだった!

呼吸療法は、気功やヨガが意識的に呼吸をコントロールすることで宇宙のエネルギーの流れに一体化したり、身体をコントロールしたりするのに対し、無意識に正しく呼吸できるようになることを目指すもので、これを実現するために様々な身体の動きとそれに合わせた母音の発声によって、体内空間と身体を支える骨格を感じ取り、意識して行きます。

 ストレスや感情の鬱積があると、呼吸(エネルギー)の流れがブロックされ、傷みや流れが滞った感じとして現れます。さらに身体の動き、母音の発声とともに大地に自分の身体がしっかりとつながり、足から吸った息が脊椎を伝わって頭の上から出て行くイメージ、また身体の前面から背面に呼吸が流れる感じ、また呼吸する体内空間が広がって行く感じなどを味わって行きます。ある部分が暖かくなったり、ドキドキ脈打ったり、自分が大きく広がった感じがしたり、しっかり大地に根を下ろした木になった気持ちになったり、心と身体をつなぐ呼吸って、とても不思議だし、面白いし、まだまだ見えない深い深い世界が広がっていそうです。

 疲れるような激しい動きはないのに、まだ山の新鮮な空気に慣れていなかったこともあり、なんと効果があり過ぎて(!)ものすごく疲れてしまい、おかげでコースのうち、水曜日と金曜日は部屋で寝ていることと相成りました。もっとも毎回、その日の夕食には出て行かれるまでに回復したのですけれどね。そこで、もう私の体力ではこれ以上コースは受けない方がよいと判断。土曜日は、練習は見るだけにしてメモを取りました。

 呼吸療法についての予備知識はほとんどない状態で行ったので、呼吸とエネルギーの流れの持つ力の大きさにびっくり! でも家で無理せず、少しずつやっていけば、健康増進に相当な貢献をしてくれそうな気がします。

 コースは午前中の2時間半だけ。日によっては午前中と夕方に分けたり、夕方だけだったり、ホテルが用意してくれている宿泊客用プランとの兼ね合せによって色々。自由時間もたっぷりですから、ホテルの企画したハイキングや薬草園見学に参加したり、ホテルの庭の寝椅子で読書やお昼寝をしたりと、みんな本当に気の向くまま、ああ、休暇、という過ごし方をします。
 
 食事のテーブルも一緒ですから、食事の後もそのまま色々語り合ったり、午後を一緒に過ごしたり、打ち解けてとても楽しく過ごせました。

8月15日(水)
 中でも楽しかったのが、15日(水)のコンサート。コンサートに行ったのではなく、私たちでグループのコンサートを開いたのです。
 コース参加者たちが、前日の午後ハイキングに行った時に雨に降られ、案内人が近くにあった納屋に入れてくれたのですが、彼女が、雨を待つ間、素晴らしい声で歌を歌ってくれたそうなのです。しかも彼女は昔「ピヒルシュロス」で働いていたのだそう。というわけで、翌日彼女にギターを持って来てもらって、コンサートを開こうよ、ということになった次第。私は疲れていたので、ハイキングには行くつもりだったのだけれど諦めたため、「納屋のコンサート」は聞けませんでした。歌を聞かせてもらえるなんて、楽しみでワクワク!

場所はホテルに許可を得て、「緑のサロン」を使わせてもらえることに。ここにはコンサート用のグランドピアノも置いてあり、内装もエレガントだし、コンサートの環境としては最高です。椅子を輪に並べて、午後8時頃、コンサート開始。参加者の中にブルガリア人の男性がいて、ものすごく歌が上手というので、まず彼にブルガリアとロシアの民謡を歌ってもらいました。深みのある素晴らしい声、哀愁のあるメロディー。翻訳なんて全然必要ありませんでした。彼の表現力が素晴らしいので、そのまま思いが私たちに伝わって来ました。彼の歌とギターの伴奏に私たちは身体中耳になり、歌の中に引き込まれていきました。

さて、今度はコース参加者のオーストリア人男性がギターを弾き、案内人の女性と一緒にオーストリア民謡を歌ってくれました。男性が歌う低音部と澄んだ彼女の声が歌う高音部とが気持ちよく調和して、ああ、民謡っていいなあ!と思いました。それぞれの民族が大切にする思いが、民謡を通して伝わって来る気がします。音楽は人の心を結びつける、と心底実感した瞬間でした。

私たちの小さなコンサートを、偶然下を通りかかったイタリア人のカップルが聞きつけて、二階の「緑のサロン」に上がって来ました。「私たちもコンサートを聞かせてもらってもいいでしょうか?」ですって! もちろん、どうぞ!と座ってもらったら、メンバーは、ドイツ人、オーストリア人、ブルガリア人、日本人の他にイタリア人が加わってさらに国際的になりました。

またブルガリア人とオーストリア人の二人が歌ったら、ねえ、日本の歌も聞かせて! ほら、「さくら」の歌があるでしょう?という声が上がって、ついに私も歌うことに。まあこの際、私しか日本人はいないのだから、草の根文化大使にならないと、と腹をくくって(ちょっとオーバー?)、「さくら、さくら」と「隅田川」を歌いました。ピアノはあっても、弾き語りしたらどちらかがだめになってしまうので、アカペラ。それでもなかなか聞けない日本の歌ですから、みんな喜んでくれて、私もホッとしました。「荒城の月」とか「さくら、さくら」くらいピアノを弾きながら歌えるように、練習しておかなくちゃね。

「緑のサロン」の優雅な雰囲気、気の合った仲間同士が集う中に流れる民謡の心。私たちの心の糸が結ばれたような、本当にすてきな、至福の二時間でした。

8月16日(木)
  
このホテル、健康に気を配ったおいしい料理、行き届いたサービス、ホテルがポツンと立っているため、ホテルバスを使って、自然公園内の様々な催しに参加できるように企画したりと、お客様に気持ちよく過ごしてもらおうという心意気がこちらにも伝わってきます。庭でのグリルの夕食もその一つ。運良くお天気もよく、気持ちのよい庭でおいしい食事を味わいながら、おしゃべりする楽しさは格別でした。

グリルパーティ、早く始ま〜れ!(午後6時半頃です。明るいでしょう?)    
                          
                      
お皿を取って、好きなものを乗せてもらいます

8月17日(金)
   朝食は人によって時間が違うので、確実に皆が会えるのは今日の夕食が最後。それで食後、みんなに楽しい日々をありがとうの気持ちを込めて、折鶴をプレゼントしました。鶴は長くて、幸せな人生を象徴するお守りよ、どうぞいつまでも元気でね、という言葉を添えて。そうしたらみんなすごく喜んでくれて、これ、自分で折ったの?折り方教えて!というので、じゃあ、折り紙持って来てるから、好きな色選んで、みんなで今一緒に折りましょうよ! と急遽、折り紙講座の開催となりました。

 折り終わってから、「ちょっと小さな魔法をかけるから、見ててね」と言って、鶴の後ろ側を開き、真ん中にしっぽを折りこみ、左手で鶴の胸を持って、右手でしっぽをそっと後ろに引くと、鶴が羽ばたいて飛び立ちました!みんなは、「きゃあ、すご〜い!」と大喜び。みんな一瞬子どもに戻ったようでした。

  鶴は初めて折り紙を折る人にはちょっと難しいので、一回で覚えるのは無理だったため、折り方を描いて送ることになりました。そして住所やメールアドレスを交換し、元気でね!と頬を寄せ合って、お別れの挨拶。みんなのお陰で本当に楽しい日々が過ごせました。ありがとう!またこのホテルで会える日があったら嬉しいな。      
  

8月18日(土)
   さて、呼吸療法コースが終わったあとは、ウィーンへの帰り道に住む友人を訪ね、一泊させてもらって、翌日ウィーンへ戻るつもりでしたが、それは体力的に無理と判断して、残念だけれど、ほんの少しだけ会ってお茶を飲み、次回を楽しみにそのまま1日早くウィーンへ戻りました。

        

                       
           ホテルの庭のお昼寝用(?)ベッド
         ゆったりくつろげるこのホテルの象徴のよう。
                      

 

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