・図書館文学講演会・

 

忘れられた人気童話収集作家ベヒシュタイン −グリムのかげで

    日時:2001311日、13:3015:00

    場所:千葉県白井町立図書館(20014月より白井市立図書館)

2階研修室                      

 

 

 

<講演内容>

1. 童話はなぜ大人にも面白いのでしょうか?(童話って何?)

    ・・・神話と昔話、魔法昔話

2. 19世紀のドイツとベヒシュタイン

1)19世紀のドイツとグリム童話 ―市民社会の確立に果たした意味

   2)ベヒシュタインの生涯と作品 

−何のために書いたか? なぜ忘れられたのか?

3. まとめ −ベヒシュタインの現代性

          建前道徳の行き詰まり、深い心の本音から出発する生き方

 

 


   

           

もっと知りたい方のための

     ***** ブックガイド *****

 

  

  1.童話の成り立ち・本質・機能など、童話とは何かについて関心を持たれた方には

1)野村泫(のむら ひろし)『グリム童話』、ちくま学芸文庫、1993年、222

  童話は残酷?非科学的?など基本的な疑問に答える童話の入門書

2)野村泫『グリムの昔話と文学』、ちくま文芸文庫、1997年、350

  昔話と子ども、昔話と現代文学、昔話と聖なるものについて現代  童話研究の成果を紹介しながら昔話の本質を語る。

3)マックス・リューティ『昔話の本質―むかしむかしあるところに』、野村泫訳、

ちくま文芸文庫、1994年、269頁             

4)
マックス・リューティ『昔話の解釈―今でもやっぱり生きている』、野村泫訳、

ちくま文芸文庫、1997年、239               

  3)4)は有名な昔話を例にとってその文体の特質を明らかにするこ とによって昔話の本質を探った名著。ラジオ講演シリーズを基にして おり、読みやすく書かれている。

5)ブルーノ・ベッテルハイム『昔話の魔力』、波多野完治・福田美智代訳、評論社、

1978年、434

      心理分析学者として自閉症児を治療する中で、「なぜ昔話はあ   らゆる子どもをひきつけるのか?」に関心を抱いて研究を始め、   子どもが成長過程で出会う葛藤とその克服の仕方を、簡潔明瞭な   象徴世界の物語を楽しんでいるうちにいわば「白昼夢の中で」教   えてくれるからだと明らかにした画期的な本。子どもの心の成長   に童話がどれほど重要な役目を果たしているかを教えてくれる。   子どもと関わる人の必読書。

 

2.翻訳の意味、異文化コミュニケーションの面白さと難しさに関心を持たれた方は

1)米原万理『不実な美女か、貞淑な醜女か』、徳間書店、1994年、310

      ロシア語通訳者・翻訳者として大活躍中の著者が、異文化コミ   ュニケーションのズレから来る抱腹絶倒の逸話を通して言語の本   質に迫る。

 

3.グリム童話の成り立ちや解釈について関心を持たれた方には

1)野村泫『グリム童話』、ちくま学芸文庫、1993年、222

2)鈴木晶『グリム童話―メルヘンの深層』、講談社現代新書、1991年、214

  グリム兄弟とグリム童話を社会的背景から見直した今までとは違うグリム解釈。

 

3)森義信『メルヘンの深層』、講談社現代新書、1995年、198

   グリム童話からよく読まれている十話を取り上げ、歴史的解釈   を試みた本。

 

4.ドイツの歴史や文学史に関心を持たれた方には

1)阿部謹也『物語ドイツの歴史』、中公新書、1998年、345

  各時代の人々の世界との心理的な関わり方(物理的時間的世界像 の変遷)からドイツ史を読み解いた興味深い本。昔話の本質とも深 い関係があることがわかる。

2)阿部謹也『中世賎民の思想―ヨーロッパ原点への旅』、筑摩書房、1987年、317

      1)を読んで世界像の変遷と歴史の関係をさらに深く知りたいと   思った方にお勧め。キリスト教によって呪術的世界が締め出され   て行く過程がドイツ史であり、その中で童話もキリスト教的な衣   をまとわされるようになって行ったことが理解できる。   

3)手塚富雄・神品芳夫『増補 ドイツ文学案内』、岩波文庫、1993年、320

   全体の流れ、思潮の生まれた背景をわかりやすく伝える生き生き  した文学史。無味乾燥になりがちな文学史の中でこれは定番とも言  うべき本。

 

5..現在読めるベヒシュタインの邦訳作品

 ベヒシュタインの作品は、作者単独で出版されているものは少ないのですが、調べてみるとかなりの数の少年少女文学全集のドイツ編やドイツむかしばなしなどに、少しずつ収録されていることが分かりました。だんだん書き足していきます。意外とお宅の本棚に眠っているかも知れませんよ、再発見もしてみてくださいね。

  
  1)『まほうをならいにいった少年』植田敏郎訳、司修絵、文研出   版、1972、(文研児童読書館)
    まほうをならいにいった少年、きびどろぼう、白いオオカミ、    小さな小さな小人、王かんのあるへび、ユーターボルクのかじ    や
 

  2)『ルートヴィヒ・ベヒシュタインの三つの童話』松代洋一訳、   ジャン・クラブリー絵、3冊組、「ドアにはられた幸運」「雪の   夜の魔法」「せむしのバイオリン弾き」、電波新聞社
/ペンタン、   1986年、各冊24

3)『ヘンゼルとグレーテル』酒寄進一訳、坂本知恵子絵、福武書店 1988年、 

4)『白いオオカミ』上田真而子(うえだ まにこ)訳、岩波少年文庫、 1990年、206

5)『ハンツと子牛の頭』ビショッフ幸子訳、川上越子絵、架空社、1992年、1,456円、 小学14年向き

 

 


講演後行なわれたアンケートの結果です。

 

アンケート結果報告

回収日: 平成13年3月11日(日) 
配布枚数: 45枚 
回収枚数: 37枚 
回収率: 82.2%

Q1.講演会はどうでしたか? 
      @ 大変興味深かった 22人 59% 
      A ふつう 10人 27%
      B つまらなかった 0人 0% 
      C その他 5人 14% ・ 聞き取りにくかった。公演内容にそってもう少  し  掘 り下げて話してほしい。主題が一体なんなのかプログラムと少し違っている気がした。

 ・ 朗読が良かった。 
 ・ 図書館の企画らしくて良い。此の様な企画(外国もの)ははじめてで、また度 々お願いできればと思います。
 ・ おもしろかった。
 ・ 短調な話し方(声質)なので眠くなったが、おもしろかった。スライドや民族の風習や習慣を知ることができる人形、昔話に出てくる地域の食べ物などの話を混えたりして下さるともっと興味がふくらんだかもしれない。
 ・ はじめに、この作者の書いた話を読み聞かせてから導入したほうが興味の方向性を聴衆に持たせられたと思います。
 ・ 童話が読まれなくなった現代ですので題材的には興味のある講演でしたが、「講演者の研究内容の報告」と云う様な話し方、内容であったと思います。

Q2.講演の講演時間はどうでしたか?
    
@ ちょうどよい 28人 76% 
      A 長い 4人 11% 
      B 短い 4人 11% 
         無記入 1人 3% 

 ・ ちょっと長かったかも 
 ・ 90分では時間が短い 
 ・ 2時間ぐらいあってもよい 
 ・ なるべく予定通りに終わってほしい
 ・ 開始時間は午前のほうがよい。昼食後で眠くなりそうなので。
 ・ もし可能ならば作品の紹介をもう少ししてほしい。又、時間が足りないので省略というところを手短にできるだけの時間をとってほしい。

Q3.この講演会をどこで知りましたか?(複数回答)
       @ 図書館(ホームページ含む)及び公民館で 20人 54%
       A 役場及び駅のポスターで 1人 3% 
       B 広報しろい及び新聞、ミニコミ紙で 16人 43% 
       C その他 3人 8% ・ 親から ・ 知人から ・ 移動図書

Q4.今後、どのような講演会を望みますか? 
 ・ 学者よりも、作家の講演が聞きたい。
 ・ 実際に子ども達へ読み聞かせ等している方の話を聞きたい。 
 ・ 地域ならではの企画
 ・ 「生き方」がポジティブになるような泉的発想のもてる講演をお願いします。
 ・ グリム童話のグリムについて。どんな話があるか?など。 
 ・ 鳥のこと。セキセイインコなど家庭の鳥から、絶滅してしまう鳥のこと。 
 ・ 動物について。 ・ 歴史上の人物。万葉集の中の人物。 
 ・ 児童文学者、作家、絵本作家(親子で聞ける)、又は絵、文、発行所、読者のパネルディスカッション
 ・ 点字に関する講演 
 ・ 地元の神楽などを取り上げたもので新しい住民と昔ながらのふれあい 
 ・ 「ハーメルンの笛吹男」阿部謹也先生のご本など、中世ヨーロッパの社会の有様を詳しく知りたい。
 ・ 作家が自作品を語るもの 
 ・ うもれた作品が発見できるようなものやよく知っている作品をより深く、またちがった角度からふれられるようなもの
 ・ 講演会ならではの話(タイムリーなものでなくても良い)を今後も聞きたいです。 
 ・ カネタカカオル 世界の旅 等 
 ・ 六華仙で中村メイ子氏が読んだ話(あれは涙が出ました)。中村メイ子氏の子育ての中での読書というものの考え方などを聞いてみたい。
 ・ 世界史をテーマにした講演 
 ・ 今回のようなマイナー(アンポピュラー)な話題 
 ・ 今回の分野はおもしろかったので今後もお願いしたい 
 ・ 高齢化社会で、老後を生きがい持って生きてゆくには?
 ・ 今回のような児童文学からみや童話がおもしろい。
 ・ 松井直さんをよろしく 
 ・ 絵本もとても興味がありますが、その他なんでも。あまり、役に立つというよりは、お話として楽しく聞ける、今回のような企画がいいと思います。
 ・ 普段気がつかないような作家、作品にふれる機会がもてるような企画を。 
 ・ 作家の講演(特に女流作家) 
 ・ 難しいテーマでなく、入りやすいが「へぇー知らなかった」とか深いところがあることを知ることが出来るようなもの。

Q5.その他、お気づきの点がありましたらご記入ください 
 ・
よく聞こえず、耳を傾けるのに疲れてしまう。せっかくの講演なのに、とても残念です。
 ・ テーマと人選が的確ですなおに耳を傾けることができました。これからも政治色や名誉欲のあるような人選は避けてください。
 ・ とくになし。結構なるほどと思うのもあった。(講演)について。 
 ・ 音声がききとりにくいところがあった。マイクを持って頂いたほうがよかったのでは…。例に出る話の「タイトル名」がハッキリききとれず残念。
 ・ ベヒシュタインの話し、作品のことについて、もうすこし、まとめて、話してほしい 。
 ・ 偶然に図書館に来館し講演を知りました。大変興味深い講演で伊東先生のお話しも理解しやすくこの企画は大成功と思います。参加できたことがうれしくなりました。
 ・ 童話が実は自分の原風景をみつける文学であるということがわかって、とても興味深かったです。
 ・ 語尾が良く聞こえなかった。時々あり聞きにくい。 
 ・ 出席者が少ないのにびっくりし、また残念に思いました。 
 ・ ‘子どもの心の成長にどれ程重要な役目を果たしているかを教えてくれる。’童話の中に道徳感や価値観が潜められていること、これだけたくさん本があるのだから子どもに本を与える工夫が要求されているのでは?
 ・ 時間を講師は90分といわれた。予定表は70分。この差がないようにした方が良いのでは。
 ・ グリムの勉強は眠ってしまうことが有ったのですが時代はいけいetcあわせてよくわかりました。
 ・ とっても良かったです。このような企画が実現されて、良かったと思います。また楽しみにしております。
 ・ スピーカーの調整悪く、講演者声小さく、聞きづらかった。ねている人何人かいました。音声通らない人の場合、スピーカーの調整、絶対必要です。
 ・ ドイツの文学(民話、童謡)との関連でとても良くわかった。 
 ・ 特になし 
 ・ グリムは単に道徳等のみのためでなく内的論理から加筆等したということだがそのような点もききたかった。
 ・ はるか昔(?)ドイツを勉強したけれどベヒシュタインの名のみで作品は読んだことがありませんでした。これから読んでみたいと思います。短い時間で内容が濃い。もっと時間をかけて聞きたくなりました。
 ・ 直接本を読んでいただき、とてもよかった。すてきな時間をありがとうございました。
 ・ とても良い企画で年に2回位であるとよい(少し講演料を負担しても) 
 ・ 公演内容をパワーポイント等を使ってあらすじ書きしておければ聞き取れない部分があっても理解し易かったと思う。(講演メモを減らせ、聴くのに集中出来る)
 ・ ベヒシュタインそのものがあまり知られていないので、ベヒシュタインの紹介もレジュメに載せてほしかった。

 

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