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     ウィーンっ子のこんな生活、あんな生活


         

         
2006年10月29日に行なわれた合唱団創立60周年記念コンサート
 
            
コンツェルトハウス・ウィーン(モーツァルトホール)
 


  
昨年、伝統あるウィーンの合唱団「ユング・ヴィーン」に入団し、秋から活動に加わった。なぜまだ一度も合唱団で歌ったことのなかった私が、この合唱団に入ろう、などという勇気が持てたかと言うと、入団試験がなかったからだ。ここでは三ヶ月の合唱講座を受けて、合唱に必要な音楽知識や、正しい呼吸法・声の出し方などを学び、パートを決める小さなテストを受ければ、団員になれる。
 

 指導者のモットーは、「話せる人なら歌える」。それでもこの合唱団のレベルが非常に高いのは、創立者のレオ・レーナー始め、歴代指導者の指導力の素晴らしさと、それによって培われた力の蓄積とチームスピリットによるものだと思う。まさに指導者のモットーどおり。こうして、私は初めてウィーンっ子集団の仲間になった。



 
練習は週2回、各2時間。次回のコンサートに備えて新曲の練習をしたり、レパートリー曲をもう一度仕上げしなおしたりする。指導者と団員の間に冗談が飛び交ったりして、練習は和気あいあいと楽しく、かつ真剣。合唱団の核となっている先輩団員に引っ張ってもらって、新団員は少しずつ実力をつけていく。ただしここに来る前も別の合唱団で歌っていたという人がかなりいるので、入団年数が短いからといって、合唱歴が短いとは限らないわけで、私のように合唱団に入ったのも初めてという本当の新人は少ないようだ。

 聞いたところでは、5年を越えるとここに腰を落ち着けるというパターンがあるらしく、何十年と歌っている団員もかなりいる。団員同士で結婚したカップルも何組もいるのだそう。練習の時、子どもたちが遊んだり、パパのお膝に座ったりしているのは、そう、団員夫婦の子どもたちだったのだ。さらに春・秋には週末練習合宿があるし、海外公演では何日も行動を共にする。だからみんなとても仲がよくて、練習にやって来ると、両頬にキスしあう挨拶を交わす人たちがたくさんいる。


 合唱団のクリスマスパーティーも体験した。いつもの練習会場に組み立て式テーブルを並べ、モミの枝やろうそくで飾り、食事だけが仕出しで、あとは団員たちが持ち寄ったクッキー、ケーキ、スナック、飲み物を並べた手作りパーティーだ。

 最初に、その年入団した新人に、合唱団のマーク(シュテファン大聖堂と美しき青きドナウの最初の小節を組み合わせたもの)つきピンが贈られた。何も知らなかった私は、名前を呼ばれてびっくり!代表者が「ようこそ!」と言って胸につけてくれた。さらに10年、15年、20年、30年の団員たちにも記念品。

 見るとグランドピアノの上には、きれいにラッピングしたクリスマスプレゼントがたくさん置いてある。団員から団員に宛てたものだった。お互いに頬を寄せ合っておめでとうを言い合い、心を込めた、でもおおげさでないプレゼントを交換し合う。何だか団員たちの間に結ばれた心の糸が見えるようだった。


 けれどもこれだけしっかりと結ばれた組織であり続けるためには、それを支える陰の力が必要だ。それが役員たち。出演契約交渉の他、PR、会計管理、データ管理、HPとメーリングリストの管理等、どれも職業を持った役員たちが多くの時間を割き、熱意を傾けてあたっている。

 合唱団は自分たちの好きなことでできる奉仕もしたいと思っているので、チャリティーコンサートを開いたり、福祉団体の行事に参加したり、また毎年シュテファン大聖堂の真夜中のクリスマスミサで歌う栄誉も得ている。

 でも全ての行動の基盤にあるのは歌う喜び。歌うこと自体の喜び、一緒に一つのものを作り上げる喜び、自己実現の喜び、好きなことで役に立てる喜び、そして友情を結ぶ喜び。ある友人が言っていた。「私の友人にも他の合唱団に入っている人が何人かいるんだけれど、練習がかなり負担になって来て、やめようかと思う時があっても、団員同士の友情の魅力に惹かれてやめられない、って」。原点を見失わない生活がここにはある。

 
                       
        
   
2006年夏、シュタイヤー音楽祭公演『椿姫』に初めて
合唱団としてオペラ出演。
                好評を得て、今夏は『レ・ミゼラブル』に出演する。


*「Jung-Wien」のHPはこちらですhttp://jung-wien.at/index.php
 どうぞご覧下さい。独語と英語のバージョンがあります。

               (オーストリア日本人会会報第2号、2007年1月31日)
               

 

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